Windgraphyチーム池野 智一TOMOKAZU IKENO

Windgraphy」の開発コンセプトである「Fun of Sensing」の価値や魅力について教えてください。

池野:Fun of Sensing」というものに至るまで実はかなりの時間がかかっています。
最初は「風の見える化」というものから開発を始めました。「風の見える化」というのはまず風速の測定値をその場で視覚的にわかりやすく表示します。それをたくさん並べることで風速の分布が一目でわかるというものです。
こうして目に見えない「風」という現象を、手に取るようにありありと感じることができれば、面白いなぁ、いろんなことに役立てて作業が楽になったり、生活が楽しくなるだろうなぁという直感から、開発がスタートしたんです。
やがて、「風」を目で見るという新しくて楽しい体験は、知的好奇心を刺激してさらに新しい発想を生み出す原動力になるのではないかという考えが生まれました。
センシングという、これまでは「まじめな産業用途」が主であった技術を楽しむためにも使う。その部分を強調して、センシングの楽しさを世界に広めたい、「Fun of Sensing」というコンセプトに至りました。

Windgraphy」が持っている機能やその特徴はどういったところにあるのでしょうか。

池野:Windgraphy」、「風の見える化」の一番の特徴は、誰でも簡単に気流の分布や動きが直感的にとらえられる、そういう体験を提供する、というものです。
それの持つ機能というのはまず、風速の検出。弊社はセンサメーカーということもありますので、風速を検出するということと、そこに追加してそれをわかりやすく表示する、リアルタイムでデータを収集する、それらが集まって「Windgraphy」になります。
さらにそれをPCなどと連携させますと、風速表現を超えたさまざまな応用が可能だと考えています。
従来の風速センサは、正確でも高価だったり、取り扱いが難しかったり専門知識が必要だったりしましたが、「Windgraphy」は「風」の全体を見るということで、風の表情をとらえることができて、取り扱いも容易です。

誰でも使える「Windgraphy」が開発されるまでに、どういった進化を遂げてきたのですか。

池野:そもそもKOAの既存製品であります「白金温度センサ素子」の販売促進の目的で、応用事例のひとつとしてお客様にPRするために開発した展示会向けの試作品がスタートでした。
そこに、アナログ回路や自分が得意としている技術、マイコンやソフトウェアというものを組み合わせて何が作れるだろう、と思ったときに、自分なら何が欲しいか、何を見てみたいかということを考えて、風速の分布、それも今その場の生の風速値の分布や動きをみることができたら面白いだろうなぁ、と思ったことが「風の見える化」をつくるきっかけでした。
展示会では、予想を超えた好評価をいただきまして、自分たちの取り組みが、世の中にはまだない何か面白いもの、とても役立つものに成長するかもしれないという大きな可能性を感じました。
そうやって2016年まで、毎年のように展示会向けの試作の中で、お客様から寄せられた「フルカラー化」や、「PCと連携したい」といった要望にひとつひとつ応えて開発を続けてきました。
そうやって、誰でも簡単に気流の分布や動きが直感的にわかることが、作業を楽にしたり気持ちを楽しくすることに繋がる、という「Windgraphy」のコンセプトに気が付くまでに進化してきました。
同時に、将来のビジネス化への備えとして、「風の見える化」に最適で使い易く、ちゃんとした性能・品質の風速センサを手間なく作るための「ものづくり」の技術開発も、細々とですが着実に続けてきました。
そして、2016年以降、回路やソフトウェア、流体、機構などの設計経験者が増員されまして、PCとの連携はもちろんお客様のアプリケーション領域まで背伸びした研究開発にも取り組めるようになりました。
今は、さまざまな分野のお客様との「共創」、コラボレーションを通して「Windgraphy」を役立てていけるように夢中で挑戦をしているところです。

ご自身が考える「Windgraphy」の魅力と、未来にかける夢を教えてください。

池野:自分の目や肌で感じる以外の、自分の身体から離れた場所の感じている環境・置かれている環境というものをありありと知ることができる体験、まるで自分の肌がそこまで広がったかのような、そうやって得られる情報というものを、どれだけ自分がおもしろく感じるか、うれしく感じるか。
その知ることの楽しさとか喜びがあるということに、自分で作ってみて初めて気が付きました。
それは「風の見える化」技術からはじまってはいますが、決して風にとどまることはないと思っています。
音声や映像では既にかなり以前から記録したり再生したり遠くのものを体験したりということが可能でしたが、風や風以外の直接目には見えないいろいろな情報をあたかも目で見るかのようにありありと生々しく感じることができる体験は、おそらくまだ人々が味わっていない新しいものだと思います。
この先にどんな展開があるのかわかりませんが、新しい体験が発見へと繋がり、もっとこんなことができるんじゃないか、さらなる学びがその次を生み出して… というポジティブな連鎖を生み出せる可能性を感じることが喜びでもありますし、夢ですね。
Windgraphy」は、ひとつのセンサで正確な値を測ることにはあまりこだわっていなくて、その代わり多くの点の測定値の傾向から何かを知るという技術なんですが、これはまさしく人が肌で風を感じる様子、一方向から涼しい風が肌をなでることで「風がどちらからどちらに流れていった」ことを知ることと通じるものがあると思っています。
人はそもそも日常生活の中で正確な測定を活かしている場面はあまりなくて、でもそこそこ正確で、多点や面の分布をとらえたデータだからこそ役に立つ使い易さみたいなものがきっとあると思うんですね。
ですので「Windgraphy」の先につながる未来としては、面と多点で測定をすることで実現される生き物の自然な感覚に近いセンシング-「生き物の肌感覚」のようなセンシング-といった新しい展開を切り拓いていきたいと思っています。

開発者として仕事をする中での「Windgraphy」との出会いや価値・喜びとは。

池野:もともとは広告宣伝の立場で、お客さまにKOAの部品の使い方を提案する、ビジネスの援護射撃をするための、ある種事務的な取り組みが始まりでしたが、お客様や自社の社員が喜んでくれることの積み重ねが今の原動力になっています。
「もっとこう使いたい、こういうのが見たい」という皆さんのご期待に加えて、自分にも「こんなものを見てみたい、作ってみたい」という欲求があり、お客様も社員も自分自身の期待にも応えて皆を喜ばせたい、という想いが「Windgraphy」以降の人生をかけている部分でもあります。
わたしの所属は社内外のいろんな経験者が集まってできている部門でして、わたし自身も社外でまったく畑違いの技術を蓄積して、でもこの会社で新しい技術も学ばせてもらって、その全部を融合して生み出したものなんですね、「Windgraphy」は。
その蓄積をできれば次の世代、若い技術者にも伝えたいと思っています。
Windgraphy」はすごく小さな取り組みだとは思うんですが、それでも自分たちとしてはかなり背伸びして頑張っている部分があります。お客様から言われたものを作るのではなく、自分たちが欲しいものを自分たちで生み出す。
その背伸びが次のステップにつながって、一歩一歩階段を上っているという実感があって。
それで社内外喜んでくださるのが感じられて。すごくポジティブなフィードバックがかかっていると思います。
これを社内の次世代だけでなく地域にも伝えて、KOA発、地域発のオリジナリティと活力が溢れる未来を作る一翼を担うことができれば嬉しいなぁと思います。

これから巡り合う「共創」パートナーとともに作りたい未来とは。

池野:すごく大きな話になってしまいますけど、日本は昔、車とかテレビ・ビデオ・オーディオ、とか元気が良かったのに最近元気が無くなってきている。
もっと日本が元気になるためには、やっぱり自分たちで新しいものを生み出す必要があると思います。
新しいものというと、しばしば「何を生み出せばいいのかわからない」という話になりますが、自分たちが欲しいものを作ればいいんじゃないか、と思うんです。
Windgraphy」もそうで、無いから作った、作ったら面白かった、欲しいという人がいた。さらにそこからの広がりがあって…というポジティブな循環の中で、自分たちが欲しいものを楽しみながら生み出していける、そんな活動を一緒にやりたいですね。
お互いが喜ぶような新しい何かを、お互いが対等な立場で提供し合う。そこに集った人たちでないと生み出せなかったものを生み出していく。パートナーの方たちとそんな未来を作りたいです。

インタビュー実施日:2018年1月22日

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